世界のウェルネスツーリズム市場規模は、2024年に9,541.4億米ドルと推計されており、2025年から2034年にかけて年平均成長率(CAGR)7.97%で成長、2034年には約2兆549.0億米ドルに達すると予測されています。
健康やウェルビーイングへの関心の高まりに加え、オフィスワークによる長時間の座りがちな生活習慣の影響、そしてライフスタイルの質を重視する人々の増加に伴う可処分所得の拡大が、市場の成長を後押ししています。

本記事では、最新のウェルネストレンドを日本の文化や習慣と関連づけながらご紹介します。
1. ロンジェビティ(長寿)の本質的な追求 – 日本の長寿文化とのつながり
近年、ウェルネス業界では「ロンジェビティ(長寿)」が大きなキーワードとなっています。長寿を実現するためのライフスタイルや食生活に関心が集まり、市場規模は2030年までに442億ドルに達すると言われています。しかし、2025年のトレンドでは、バイオハックによる延命ではなく、より自然で文化的な長寿の知恵が重視されるようになるでしょう。
(Condé Nast Traveler「Can Group Hiking Lead to a Longer, Better Life?」)
日本の「ブルーゾーン(世界的な長寿地域)」として知られる沖縄では、「生きがい」「共同体」「自然との調和」が長寿の秘訣とされています。今後、日本のウェルネス施設でも、長寿地域の知恵を取り入れたプログラムが求められることが考えられます。
例えば、
- 目的を持ち、日々の生活に楽しみを見出す「生きがいプログラム」
- 共同体の中で支え合い、孤独を防ぐ「地域型ウェルネス」
- 身体に負担をかけず、自然な動きを取り入れる「日常生活エクササイズ」
こうした、日本人が古くから実践してきた健康法が、これからのウェルネスリトリートや宿泊施設の差別化要因となるでしょう。
2. エモーショナルウェルネス(心の健康) – 禅と「間」の文化がもたらす癒し
2020年以降、ストレス関連の疾患が世界的に35%増加(WHO調査)しており、2025年にはメンタルウェルネスの重要性がますます高まると予測されています。特に、日本には禅や坐禅、茶道、温泉や間の文化など、エモーショナルウェルネスに通じる文化や習慣が豊富にあります。
こうした要素をウェルネスプログラムに取り入れたり、空間デザインに反映させることで、より本質的な癒しの体験を提供し、その価値を高めることができます。
3. コミュニティとつながり – 「おもてなし文化」がウェルネスの鍵に
ウェルネスの分野では、個人の健康だけでなく、「コミュニティとのつながり」が重要視されるようになっています。ハーバードスクールの研究によれば社会的なつながりを持つことで生存率が50%向上するとされていることもあり、世界各地で「ユーダイモニア・サミット」のようなウェルネスフェスティバルが増えています。
日本には、古くから「おもてなし文化」や「ご近所づきあい」が根付いており、これがウェルネスツーリズムの新たな形として活用される可能性があります。例えば、
- 地域の食材を活かした「結びの食卓」 … 参加者同士が食を通じてつながる体験
- 地元住民との共同活動 … 農作業や工芸体験を通じたウェルネスプログラム
- 宿坊体験 … お寺や神社での共同生活を通じた心の浄化
●まとめ
2025年のウェルネストレンドは、単なる「健康維持」ではなく、より文化的・社会的なつながりを重視する時代へとシフトしていきます。日本の温泉文化、禅、茶道、そして地域とのつながりを活かしたウェルネスのあり方は、今後ますます注目を集めるでしょう。
ウェルネスツーリズムを提供する施設やブランドにとって、これらの要素を取り入れた体験を提供することは、競争力を高める重要な戦略となるはずです。私たちSO.WA コンサルタンシーも、日本のウェルネス文化を活かした新しいプログラムの開発に取り組んでいます。2025年のウェルネスの未来に向けて、さらなる発展を目指しましょう。